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<<   作成日時 : 2010/09/04 00:20   >>

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「不況は人災です!」(著:松尾匡 http://matsuo-tadasu.ptu.jp/
景気を良くする事は福祉や再分配と対立するものではない(景気が良くなって福祉サービスにお金を使うようになれば、失業者が福祉労働者として雇われ、さらに景気がよくなり福祉も充実する。再分配でお金が貧しい人々に回って生存を維持する為の食糧などの消費に使われる事でも生産が増え雇用が生み出され景気がよくなる)という話が面白かった。
1930年代のデフレ不況下に登場した金融緩和財政政策拡大による景気回復を説く新しい学説は、1960年代の高度経済成長の時に採用され、デフレ不況に対処する経済政策が高成長時代に実施されひどいインフレに悩まされる事になる。1970年代の高インフレを抑える為金融引締め政策・財政政策を縮小し「小さな政府」にするという
新しい学説が出てきたが、今度は失われた20年のデフレ不況の際にその学説に基づく政策が実施され更にデフレがひどくなったという話(学説が政策として実施されるまでにタイムラグがあり、その間に経済状況が代わり政策が無効どころかかえって有害になるという話)が面白かった(しかし日本は金融引締めスタンスが強く、その為に1970年代の高インフレをうまく乗り切っていたと何かの本で読んだので、少し歴史認識(小泉の時に金融引締め・小さな政府採用という話)が違うのではないかとボクは思った)。
犯罪件数の増加・少年犯罪の増加・不特定多数と性交渉すると感染する性病の増加・自殺者の増加・離婚の増加は、「モラル」の問題ではなく、「不況」の問題だという話が面白かった(失業率が高くなると犯罪発生率も高くなる・刑務所で寝床と食事を確保する為に障害者や貧乏人が犯罪を繰返す・高卒求人数が減ると犯罪少年の数が増える・サンプル数が少なく統計的に有意な分析ではないが女性の失業率が増加すると性病も増える・失業率が高くなると男性自殺死亡率も高くなる(特に中高年男性)・失業率が高くなると離婚率も高くなる(男女平等・個人主義的価値観などの理由と言うより「金の切れ目が縁の切れ目」と言う感じ)という事がデータから導き出されている。ちょっと経済決定論的な色彩が強すぎるとは思うけれど。)
2003年からの景気回復
総需要(消費・投資・政府支出・貿易収支(輸出から輸入を引いたもの))で景気の具合を判断する。
消費はほんのわずかしか改善していなかった。
政府支出は公共事業削減で財政赤字を減らすようにしたので減少(景気的には良くない)。しかし公共事業削減で政府支出を減らしたのに、不景気による税収減少で財政赤字は減らせなかった。
投資は企業の設備投資が大幅に改善し、景気回復に大きく貢献した。設備投資の大幅改善は、機械や工場が古くなって廃棄され新しい設備が必要になった為と2003年〜2005年の名目利子率が戦後最低記録を更新し続けた為と日銀の量的緩和の本格化や円安政策により人々のデフレ予想が消えていた為。
貿易収支も大幅改善。2003年・2004年に行われた財務省の大規模な円売り介入による円安の為。昔は日銀で作った「円」を政府が為替介入する時に外貨を買う為に使っていて、その作った「円」を日銀が回収しなければ、世の中に出回るカネが増え、金融緩和効果があった。2000年4月から日銀の作った「円」での為替介入はできなくなったが、政府が為替介入する時に日銀も歩調を合わせて金融緩和拡大政策を行ったので、2003・2004年の為替介入の時には金融緩和の効果もあった。
*1993年3月までは、政府が政府短期証券(FB)を発行し、日銀が全額を引き受けて円資金を調達しドルを買った(市中現金と日銀当座預金増)
しかし2000年4月FBは完全入札となり、日銀が買いオペしなければ、市中でFBは消化され円は供給されなくなる
不胎化と非不胎化介入
「為替介入の際円高是正の為、金融当局は外貨購入の対価として円を供給するが、日銀が「その円を放置して貨幣供給の拡大を容認する」のが非不胎化介入で、「それを放置せずに売りオペで相殺する」のが不胎化介入。2003年・2004年の為替介入時には日銀により「非不胎化介入」が行われたのだとボクは思う。
デフレ不況を脱却するにはどうすればいいか?
人々の頭にインフレ予想が定着するように日銀が具体的なインフレ目標値を約束して大幅な金融緩和を行う。必要ならば金融緩和で日銀が無から作ったおカネを原資にして政府支出を拡大して総需要を増やす。
ケインジアン「資本主義を放置していると財・サービスへの総需要が不足して大量の失業者が出るので政府は積極的に経済に介入し失業を無くすべき」という考え(「大きな政府」(政府は財政支出拡大による雇用創出や金融緩和政策を積極的に行うべき)。「価格と賃金の下方硬直性」(モノが売れ残っても価格はナカナカ下がらないので、買い
手が増えず、需要不足は改善されない。失業が増えても雇用されている人達の賃金はナカナカ下がらないので、企業は雇用を増やさず、雇用は回復しない))
新古典派「総需要不足は民間に任せておけば市場メカニズムが自動的に働いてすぐに解消される。それより経済を成長させる為には供給能力をあげるべき」という考え(「小さな政府」(規制緩和。福祉を削減して労働者を労働に駆り立てる等の政策を行うべき)。「価格や賃金の伸縮性」(自由競争に任せれば売れ残ったモノは価格が下がり、失業者が出たら労働者の賃金が下がって雇用が増える)「合理的期待」(将来を織り込んで予想行動する)「ミクロ的基礎付け」(個々の消費者や企業がめいめい自分にとってちょっとでもマシになるよう将来を見据えて計画して、消費・生産・設備投資などを決めると考える事))
日本での新古典派に対する反対派の主流(マルクス経済学とポストケインジアン)「独占資本(大企業)により競争が阻害され、価格吊り上げが行われ、インフレが続く」という考え。(価格を吊り上げないように大企業を規制。それでもダメなら大企業を国有化して安い公定価格にする。「業突く張りの大企業が儲けを追求した為、弱者の暮らしが犠牲にされる」というインフレ観。インフレ悪のイメージ・新古典派の手法への嫌悪感・景気対策=金権公共事業のイメージ・経済成長悪玉観・反米意識が根強いのが特徴。)
日本のデフレ不況で、価格も賃金も下がり、そこで需要不足や失業は解消されて均衡にも向かわず、益々価格と賃金は下がり続けたという、ケインジアンの価格賃金の硬直性も新古典派の価格賃金の伸縮性による均衡もあてはまらない状況が発生した。
新しいケインズ理論「新古典派のような市場万能主義ではないが、新古典派の価格賃金の伸縮性・合理的期待・ミクロ的基礎付けを踏まえた理論」(人々がデフレを予想し、消費者は価格が下がると予想するので買い物を先延ばしし、賃金も下がると予想するのでローン・借金してモノを買わず、企業もコストが下がると予想して設備投資を先延
ばしにするので、総需要が減ってモノが売れなくなり、価格・賃金(モノが売れなくなって企業が雇用を減らすから)が実際に下がる。こうしてデフレ予想が実現し、実現したデフレが人々のデフレ予想を更に強め、デフレスパイラルにはまり、価格・賃金(失業者や新規雇用抑制や非正社員の増加という形での下落)はどんどん下落する。と考える)
*新ケインズ理論は新古典派の理論を使って日本のデフレ状況を分析し、積極的な金融緩和・財政政策でのデフレ不況からの脱却を主張する。しかし日本では新古典派に対する反対派の主流がマルクス経済学やポストケインジアンだったので、新古典派の学会大御所達が政府の審議委員を占領し、新古典派の理論を劣化コピーしたエコノミスト達が「ケインジアンはもう古い。新自由主義が経済のスタンダード」と喧伝し、デフレ不況下の首相の小泉が「景気が回復したら改革意欲が無くなる」と言って不況の最中に総需要を縮小させる政策をとって多くの人々を路頭に迷わせていた時に、新古典派反対派の人達はインフレを警戒し景気拡大政策を批判して金融緩和は「ジャブジャブ」財政支出は「バラマキ」と言って批判するしょうもない状態(明日の暮らしにも困る人々からすれば全く救いようの無い構図)だった。
欧州社会党も社会主義インターナショナルも欧州左翼党も金融緩和・財政支出拡大による総需要拡大により完全雇用と安定的な経済成長を実現する事を目標にしている。
日本の社会党「金融緩和は企業や銀行の資金調達に恩恵を与えてきた反面、国民に対しては資産の目減り・収入減による痛みを強いてきた」
日本の共産党「インフレで物価が上昇すれば、国民の預貯金は目減りし、所得が減少しているもとで益々個人消費に打撃を与える。低金利は国民の利子所得を奪い、大銀行の利益を増やし、ゼネコン・大企業の利子負担を減らすだけ」(「完全雇用」どころか「失業を無くす」も「雇用拡大」も目標に無い)。
と日本の左翼系はインフレ・金融緩和悪玉感が根強かった。
奪われた利子所得の3分2は全世帯の4分1にも満たない富裕層が負担。さらに貧乏で借金やローンのある人にとって利子が上がるのは負担増。更に金が必要な時に新しい借金も出来にくくなる。大企業の経営者は会社の借金に対して自腹で責任を負う事は無く利子率が上がったら引退後の所得が増えて得するだけだが、零細企業や個人商店の経営者は個人保証が求められるので、お店の運転資金の利子が高くなると、実質経営者個人への負担が大きくなる。
*つまり日本の左翼政党は、彼等の意図とは裏腹に貧乏人より富裕層を擁護していた。
1970年代のインフレでは物価の値上がりより所得の伸びの方が大きかったので生活は豊かになった。1990年代のデフレでは物価の値下がりより所得の減少の方が大きく生活は苦しくなった。
金融緩和政策でマイルドなインフレになったとしても、現在の日本では最初から物価値上がりよりも高い賃金の上昇が起こる事は期待できないので、失業が減り人手不足になって賃金が上昇する環境になるまで何らかの対策を採るという点で労組にも重要な役割がある(具体的な対策の内容は書かれてなかった。しかし金融緩和すればそれですむ訳ではないという話は興味深かった)という話が面白かった。
外国から資金が入ってくると外貨を円に換えるから円高要因で輸出の足を引っ張り景気悪化。外国に資金が出て行くと円を外貨に換えるから円安要因で輸出が増え景気は良くなる。
*中国やアジア通貨危機前のタイ等外貨が入ってきて豊かになる国は、先進国の機械等の導入で生産能力が上がるから(供給側の改善)で、さらに実質固定為替相場制を採用していて、外貨を国内通貨に換えるためにどんなに外貨が流入してきても中央銀行が無から国内通貨を作って換えるので金融緩和と同じ効果(市中に出回るお金が増えるのでお金の価値が下がる)がある為に景気もよくなるからである。変動相場制で需要不足が問題の日本にはあてはまらない。
*飯田泰之の言っていた「外資系企業を呼び込み外資系企業での雇用を増加させる」というのは外国資金が入ってくるのとは無関係なのか?と思う。
円高のメリット「安い輸入製品が入ってくる事で、その製品を作っていた国内の人達が福祉や医療など人手不足の他の産業へ移動できるようになる事」
*円高になると純輸出が減少し、総需要が減少、さらに割安になった輸入品によりその輸入品と競合する製品を生産する国内企業の経営は圧迫されるので、日本国内の雇用にとってプラス面は無い。
「バブルの判断は景気拡大期に利子率が下がる事で判断し、その時は日銀が金融引締め政策をすれば、バブルを抑えられる」
*1987年〜88年設備投資激増・景気超拡大なのに普通と逆に利子率低下(株価・土地上昇が長く続いた為、それが予想として定着し、皆手元におカネを置かず、誰かに貸して運用しようとしたので、お金を貸そうとする側が借りる側を上回っていた為)。
流動性選好「デフレは本来利子の付かない貨幣を持っているだけで実質的に物価下落分利益を得られるので、人々がお金を追い求め貯め込む状態」
*流動性選好から脱却する為には手元にお金を置いておくと損になると言う予想を人々が抱く事が必要(マイルドなインフレになるまで利子を下げ続ける事を約束する事で、貸し手は「貸出を先にすれば利子が上がって得をした」と後悔しないようになり、長期的貸付も増えて借り手におカネが回り設備投資や消費が改善される。利子を下げただけでは人々の流動性選好が変わらないなら、さらにマイルドなインフレになるまで市中に出回るマネーの量を増やし持っているだけではおカネの価値が目減りしてしまう状況を続ける事を約束する事で流動性選好をやめさせる)
2003年頃からの景気回復は設備投資に関わる産業では生産や雇用が増えたが、消費者向けの産業では生産・雇用が増えなかった(偏った景気回復)。完全雇用で賃上げ実現して消費財への需要が増えても、それに見合った消費財産業の生産拡大は人手が足りなくて追いつかず、消費財インフレが進んで実質賃金が増えない恐れがある。
景気回復が偏る理由「設備投資の需要は増えるが、そこで働く人達の賃金上昇が時間的に遅れ、賃金上昇による個人消費の拡大もさらに遅れるから。消費財産業に景気回復の恩恵が及ぶのが遅いあるいは及ばないまま終わるから。」
対策「充分な金融緩和とともに最低賃金を引き上げる(金融緩和がないと設備投資に賃金分も加わり、必要な資金額が膨らみ、利子率も上がり、その為に設備投資が冷え込んで不況が悪化してしまうので充分な金融緩和政策が必要)」
不況で失業者・不安定就業者が多く、資産格差が拡大して高齢化社会を迎えると、貧乏人は金が無く必要な福祉サービスを受けられず、金持ちは高級リゾートなどに金を使い、普通の福祉サービスに対する需要が少なく、普通の福祉産業も育たず、福祉サービスが充実しなくなる。
対策「政府が医療や福祉に補助金を出して、失業がたくさんある内から福祉・医療分野の雇用を拡大する(資金は日銀が無から作り出す)」
政府の資金を日銀が無から作り出す方法
現在禁止されている「政府の発行する国債を日銀が直接買い取る」という方法を財政法の改正でできるようにする。
現在でも特別決議があれば、国債の直接買い取りはできるらしいので、それを行う。
それでもダメなら、政府が民間に国債を発行しておカネを借りた後、すぐ日銀が無から作ったおカネで買い取る。
政府が百兆円玉(硬貨の発行は政府の仕事)を一枚作って、日銀に持っていって両替してもらって、政府の口座に百兆円振り込んでもらう
財政赤字をナントカする方法
デフレの内に民間の持っている国債を部分的に日銀が買い取って、それを返還無期限の国債に転換する。政府が日銀に払う国債の利子は「課税」(日銀の持っている国債の利子に対し政府が課税して利子と課税を相殺する事?)すれば、実質的に国の借金は誰も損することなくチャラになる(ただしインフレにはなる)。
人々にカネを貯め込むと損・使うと得というインセンティブを作り、総需要不足を解消する方法
消費税を下げ、所得税を増税する(所得から消費を引いたのが貯蓄なので、貯蓄に課税する事になり、おカネを貯めると損になり、使う方が得になる)
金融資産に1月1日時点の時価の1%を12月31日に課税する(預貯金の利子は1%以下なので預貯金しておくと目減りする。バカバカしいので預貯金せずモノを買ったり、税引き後も利益が出る株や利子の高い社債を買ったり、長期貸付で高い利子を取って運用するようになるので、モノを買いたい人や会社におカネが回るようになり、消費・設備などの総需要不足が改善される。*預貯金で生活している年寄りには社会保障で対処する)。
会社にかける法人税を増税して、その分をそっくり設備投資に対する補助金にして会社に戻す(利益を設備投資に回さず貯め込んだら損する状態にし、設備投資を増やす)。
*政府の資金を日銀が無から作り出す方法・財政赤字をナントカする方法・人々にカネを貯め込むと損・使うと得というインセンティブを作り総需要不足を解消する方法は「どこまで経済的に実効性があり、弊害や問題が無いのか?」とは思うが、やれる事はなんでもして今のデフレ不況を脱却させようという気持ちは伝わってくるので好感は持てた。
中国等の新興国の景気過熱による日本の輸出増が、新興国の景気過熱を抑える為の金融引締めにより潰れてしまう前に、又日本だけが景気回復しないまま他の国が好況になり、世界的に石油高騰など資源価格高が進行し金融緩和政策をとる事が難しくなる前に、金融緩和・積極的な財政政策で内需を拡大して今のデフレ不況から脱却する事が重要という話が面白かった。

全般的に
人々の頭にインフレ予想が定着するように日銀が具体的なインフレ目標値を約束して大幅な金融緩和を行う。必要ならば金融緩和で日銀が無から作ったおカネを原資にして政府支出を拡大して総需要を増やす。という話に尽きる。
この本全体を通して労働者や社会的弱者への配慮がきちんとある所が心情サヨクのボクには好感が持てた。
「円高で頼みの綱の輸出も低調になり、にっちもさっちもいかない2010年9月4日現在のデフレ大不況日本。この本を読むと、日本のデフレ不況、やれる事は色々あるし、ちょっとはナントカなりそうな気がする。」心にそう願うロスジェネ世代で、はやく景気回復してもらいたいと切実に願う長七郎であった。

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幸福のゴールドサイン
2010/09/04 11:35

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