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<<   作成日時 : 2011/01/26 20:28   >>

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「日本は世界5位の農業大国」(著:浅川芳裕)
日本は農業の国内生産額・GDP共に世界5位。
農業者数激減は先進国の特徴(経済成長で農家が他産業へ移り、農業のGDP比率が相対的に低くなる。残った少数精鋭の農家が技術力・生産性を高めた結果大きな付加価値(農業GDP)を生む事ができるようになるのが先進国の特徴)。
食糧自給率はカロリーベース「国民一人一日当たりの国産供給カロリーを一人一日当たりの総供給カロリーで割る」
分母の供給カロリーは実際に摂取するカロリーではない(廃棄や食べ残しも含む。廃棄や食べ残しの割合は4分1以上)。
摂取カロリーにするだけで、食糧自給率は55%程度になる(現在は41%ぐらい)。
分子も自給農家・副業農家などの自家消費分やおっそわけや規格外・価格下落で畑で廃棄された全体の2〜3割ある農産物などは含まれていない。さらに国産のエサで育った家畜だけが分子のカロリーの対象になり海外の輸入エサを食べている家畜は除外される(海外のエサで育つ家畜は多い)。
*分母の数が増え、分子の数が減ると食糧自給率は下がる。
野菜の重量換算の自給率は80%を超えている。野菜はカロリーが低いのでカロリー計算での自給率への影響が小さい(総カロリー中3%程度)。
自給率は必ずしも国内生産量を上げなくても上がる(輸入が減ればいいから)。自給率が高くても入手できる食料が少なく、摂取できるカロリーも低い場合もあり、食糧・農業政策の指標として使うのは妥当でない。
牛肉オレンジ輸入やGATTのウルグアイラウンドの米の実質的な関税化の時に、輸入による国内産の危機を煽る為に、新しいカロリーベースの自給率が食糧・農業政策の指標となっていった。
日本の輸出促進予算は22億円と少なく、無意味な食糧自給率キャンペーン48億円の半分以下。
WTO(世界貿易機関)の関税削減案に抵抗する為に、日本は自国の農業が弱いと海外にアピールしている。
減反政策「米は自給率100%なので他の作物を作ろう(他の作物を作ったら補助金が出る)」という話。
*100%になっても海外輸出をしたり、もっと食べてもらおうと競争・工夫したりする意欲をわざわざ税金を使って殺いでいる。国民はこの政策の為「納税」し、「高価格の米を買う」事になる。減反者に支給される補助金は税金・国民は国産保護の為高値が維持された米を買わなければならない。余った米の政府買取にも税金が使われる。政府の買った米が業者に安く流れてエンドユーザーに届く時もマージンが乗せられ消費者がその分を負担する。さらに本当に減反が行われているか公務員がチェックする人件費も税金。減反を継続させる事で、農水省は予算を確保し、天下り団体や農協に楽な仕事を与え、彼らの利権を確保している。
自給率向上の為に安くて質のいい輸入飼料から国産の飼料米に転換させる為、政府が税金を大量投入して無理に国産飼料米を増産している(自然と輸入飼料に負けない高品質の飼料を安定的・経済的に作れる農家がでてくるのはいいが、国家が介入すべきではない)。
補助金が貰えるから作る飼料米では補助金打ち切りで作らなくなるおそれがあるので安定的に手に入らない・アメリカの飼料業者との現在の取引関係を崩したくない・飼料を変えた事で肉の味も変わってしまうので、畜産業者は国産飼料米を使いたがらない。需要の無い飼料米を税金投入して作らせるのは愚作。
小麦・大豆の転作奨励金「収穫や品質の向上に真剣に取り組まない農家を増やしている」。国産の小麦の品質は圧倒的に外国産より劣っている(それなのに値段は6倍以上高い)。収穫量(単集「1反あたりの収穫量」)もアフリカの発展途上国に負けている。奨励金が出るので小麦・大豆を作付けして管理・収穫もしない「捨て作り」も増えている。
擬似農家「マーケットが何を求めているか?何をどう作れば売れるのか?という顧客視点を持たず、農業で生計を立てられない農家」。
1ヘクタール未満の農家「農業所得は数万からマイナス10万程度。しかし役所や農協・一般企業で働いているので総所得は平均で500万円前後ある」。こういう農家に民主党が提案した農家の個別所得補償1兆円超の大半が配分される。彼らは農業で生計を立てておらず、農作物の生産性や質の向上に税金は使わない(ポケットに入るだけ)。
彼らの農作物は自家消費用で売って儲ける作物ではないので、売れない農作物が増える(それを想定して民主党は国家の農作物買い上げ枠を増やそうとしている)。
零細農家の土地を借りて大規模農業経営している農家が所得補償で土地を借りれなくなる(零細農家にとって賃料より所得補償の方が実入りが良くなるから)。地代・農地価格が上昇し、大規模農家はコストが上がり、利益が下がる(新規参入もしずらくなる)。
プロの大規模農家の方が、コスト削減の為肥料・農薬もできる限り使わないので、安全で環境にも優しい。
農業に真剣に取り組ませる制度「黒字化優遇制度」(融資して計画通り経営が黒字になったら全額返済免除・上がった利益も全額免税)
*融資も地域密着の民間金融機関にやらせて中長期的に農業を育成・伸張する融資のノウハウを学ぶ(民間金融機関は今まであまり農業を融資の対象と考えず相手にしなかった。多分農協がある為だとボクは思うけれど)。
「農家数が減り耕作放棄地が増えているので日本の農業は衰退している」というのは妥当ではない。
耕作放棄地は、土地の条件が悪く作付けしても儲からない・農業以外の産業に従事すると言う合理的理由で所有者が耕作をやめただけで、増えても問題は無い。かえって成長農場が耕作放棄地を安く借りたり買えるのでメリット(成長農場の収益・国の税収・地域の雇用が増える)がある。
「一度放棄された農地は回復が半永久的に困難」というのも嘘。事業農家の重機と土地改良技術で回復可能。
輸入小麦価格高騰「小麦に高関税をかけ(価格の2・5倍)、国家貿易(関税無しで輸入した小麦に国家マージンを足して1トン当たり17,000円で卸す)で製粉業者などのユーザー企業に特別安く卸す制度により、農水省の大きな利権となっており、国民は高い値段で小麦を買わなければならない状況にある」。
*国家貿易は国家が小麦の貿易と価格をコントロールできる完全な価格統制で農水省の利権も大きい
国際社会の食料安保の考え「国民が健康な生活を送る上での必要最低限の栄養の確保」「貧困層が買える価格での食料の供給」「不慮の災害時の食料の安全供給」。
事故米問題「三笠フーズが事故米を安く仕入れて食用として高く売った事件」
前提:日本政府は米の貿易自由化を拒否したので、一定の米の輸入が義務付けられている。
輸入される米は一等米で農水省の規格をクリアしたもので、報道されていたような品質が悪いとか農薬汚染とかはない。ただ輸入後長期間保管される時にカビが生えるなどすると、食用に適さない事故米として工業用や家畜のエサに回される(もちろん国産のお米の事故米もある)。
品質の良い一等米を輸入しておいて、国産米の値崩れ防止から輸入米を市場に出さず長期保管してカビを生えさせ(玄米やモミで輸入すればカビが生えずらいが輸入国との関係上精米輸入にする)事故米にする。農水省は保管や検査など大量の税金を使って大量の事故米をわざわざ作り出している。
事故が起きた後は「検査体制の強化をすべき」として、さらに農水省の天下り先や利権を拡大している(問題の根源である輸入米の長期保管は止めない)。
米トレーサビリティ法「米穀等の取引に関わる情報の記録及び産地情報の伝達に関する法律」は、不必要な検査を増やし、流通コストが上がり、国産米の競争力を下げる。
バター利権。2008年春に品薄で価格が高騰したバターが、2009年春には大量に売れ残り、2009年夏には又品薄になった原因。牛乳やチーズは普通に流通していたのにバターだけがマーケットで機能不全を起こした。
農水省の天下り団体「農畜産業振興機構」がバターの輸入を独占している。バター輸入業者は高い関税を払うと共に機構が買い入れたバターを輸入差益が上乗せされた価格で買い戻さなければならない。関税・輸入差益で輸入バターは輸入価格の3倍以上になるので、国産が足りないからと言っておいそれと輸入できない。高い関税と輸入差益を撤廃すればバター不足は簡単に解決するし、値段も手頃になる。機構はバターの輸入数量・時期を決定できる権限も持っている。
輸入豚肉の差額関税。1キロあたり546円という基準輸入価格を決める。それより安い輸入豚肉は関税をかけて基準輸入価格にしなければ輸入できない。
問題点
ハム・ソーセージなど値段の安い部位を使う業者が、値段の高い部位を値段の安い部位に混ぜて高い価格で輸入して、基準輸入価格に近づけて関税を払わないようにするという行為が行われるようになった(高い部位はハム・ソーセージに使わないのでダンピングで安く売るので、高い部位を作っている国産の養豚業者を脅かしている。又ハム・ソーセージは高い部位のダンピングによる損失を埋める為に材料の安い部位が高い値段で売られるので、国産のハム・ソーセージの値段も高くなる(その不利な条件の下国産ハム・ソーセージは関税が10%しかかからない海外で加工された輸入物のハム・ソーセージと市場競争しなければならない))。
外国の養豚業者は輸入基準価格までは全て同じ輸入基準価格の値段になるので、値段を高めに設定して大きな利益をあげる事ができる。
輸入業者は安い輸入豚肉を輸入基準価格で買ったように見せかける節税対策(いくつもの子会社やペーパーカンパニーを通して架空取引やバックマージンの支払いを積み重ねるという方法)を行う。その為どの国のどんな肉が輸入されたか分らなくなるという副作用も出ている(産地偽装の温床にもなっている)。
*差額関税は日本が作ったルールなので、自由に改変・撤廃できるので、こんな自由な取引を制度によって無理に歪めるような制度は撤廃すべきだとボクは思った。
日本の農産物総生産量は1960年の4700万トンから2005年の5000万トンへ300万トンの増産を実現している。自給率より国内生産量の向上を目標にするべき。
食料だけでなく、食料を作る為のエネルギー・肥料なども考慮しなければ食糧安全保障は意味が無い。
農業の問題「日本は少子高齢化・人口減少で市場規模が縮小している事」
日本農業成長八策「税金を出来るだけ使わずに農業の市場規模を拡大し、農家の所得を増大させ、関連雇用を生み出し、地域国家の税収を増やす策」
「需要のある民間版・市民(レンタル)農園の整備」
政府は農地法の規制緩和やサービス料の一部支払いなどでバックアップすべき。
「農家による作物別全国組合の設立」
全国の農家が結集出資して専門スタッフを雇って、マーケティング調査・出荷業態別の品質基準・収穫量増大などの生産性向上の為の研究調査・価格策定・生産調整・ブランド力強化等を行い、行政に対しては障害になるような制度法案の改善を迫り、振興や助成を求める。
同じ作物を作る他産地農家との競合を避けることが出来る。
輸出においても、一致団結した全国マーケティング組織の下、輸出戦略を展開した方が効率的。
「科学技術に立脚した農業ビジネス振興」
品種登録・特許申請・ライセンス契約など農業のソフト産業化を推進し、海外展開を積極的に図る。
地方銀行などが支援して、県が持っている農業資産を世界に発信させるといった事も考えるべき。
現在は各県の試験場に予算が集中し、県境を越えて試験場の成果が活用される事が無い。
「輸出の促進」
「検疫体制の強化」
他国の検疫体制を科学的に検証し、過剰であればWTOに提訴する。
農水省の役人を1000人規模で輸出検疫の作業や有望国との交渉業務に当たらせる。
「農業の国際交渉が出来る人材の育成・採用」
「若手農家の海外研修制度拡充」
「海外農場の進出支援」
この日本農業成長八策で、9兆円の新規需要を創造。既存の8兆円と合わせて農業産出額は18兆円(計算では17兆円だけど・・)になり、世界一のアメリカを追い抜く。
かかる税金は、輸出補助金・海外への農場進出・若手農家の海外派遣に各1000億円の3000億円のみ。個別所得補償1兆円の3分1で足りる。
在庫量を公表「主要品目の自国ならびに主要生産国・消費国の月初と月末の在庫量を逐一公表(主要国の収穫量・農家庭先価格・国内消費量・輸出入量を併記すればなお可)」
*食料が足りなくなった時何が食えるかと言えば在庫しかないから。
先進国で食糧危機の脅威と言われるのは、栄養失調や飢餓の問題ではなく、消費者にとっての食の選択幅や食の安全に関する事柄を意味している(先進国では食糧安全保障への期待もレベルが高くなる)。
全般的に
自給率は食糧安保の指標としては意味が無いと思った。食糧不足・飢餓を心配するのであれば「生産量」を指標にしたり、「在庫量」を指標にしなければダメだとボクは思った。
農産物が自給できても、農産物を作る燃料や肥料などが自給できなければ意味が無いというのが説得的な説明だった。
日本の農家は年寄りが細々とキツくて給料の安い農作業をこなすというボクのイメージは覆った。ボクのイメージの農家は大抵兼業農家で、農家の低い収入を補う他の仕事の収入があるというのが驚きだった。もし本当なら個別所得補償で支援しなくても良いのではないかとボクは思った。
国や農水省の政策や補助金はできるだけ廃止し、農業も市場競争に任せた方が、消費者が低価格で高品質の食料を手に入れる為には良いのではないかとこの本を読んで思った(ただし市場競争に任せていると高値がつけばバイオエタノールなど食料をエネルギーの原料に変えてしまうとか食糧安保の点からはちょっと不安がある事もあるともボクは思ったけれど)。
関税とかもできるだけ廃止し、輸入農産物と国産を競争させ、さらに世界中から食料を輸入できるようにした方が、「低価格で品質の良い国産農作物を作る」点でも「食料安全保障」の点でも有効なのではないかとこの本を読んで思った。
先進国では農産物の供給量が不足する事より、需要が不足して供給過剰になる方が問題というのが説得的な説明だった。
日本の農業は、「キツくて、給料が安くて、年寄りばっかで、衰退している産業」というイメージが覆り、国や農水省がヘタに関与しなければ充分成長産業としての可能性があると分り、食料不足への曖昧な不安もスッキリ解消される面白い本。

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