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zoom RSS 読書感想文 31

<<   作成日時 : 2008/11/07 01:13   >>

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「資本主義は嫌いですか?」(著 竹森 俊平)
リスク(発生確率が予想できる危険)しかとらない事業は競争により利潤がなくなっていってしまうが、不確実性(発生確率が予測できない危険)まで足を踏み入れた事業は(可能性は少ないが万が一)成功すれば莫大な利潤をえられるという話をタクシー業界(リスクしかとらない事業の例)と欧米の金融業界(不確実性に足を踏み入れている事業の例)とを使って説明していたのが面白かった(与信審査もろくにないサブプライムの住宅ローンの危険は不確実性といえるもので、それを金融テクニックで証券の中にうまく詰め込み一般投資家に売って欧米の金融業界は「利潤」を稼いだ)。
熾烈な競争の中で「高利潤」「高報酬」を維持しようとして、サブプライムローンのような計算できない危険(不確実性)に金融機関が踏み込んでいった結果が、サブプライム危機を引き起こした。
バブルとバブル崩壊の問題は銀行中心の金融システムでも起こる(80年代・90年代の日本)し、市場中心の金融システムの下でも起こる(21世紀初頭のアメリカ)。また「不確実性に直面する」という問題は、資本主義でも社会主義でも深刻な問題で経済体制を変えればいいという話でもない
91年に金融危機が起きたスウェーデンは、金融危機の深刻さを即座に認め、主要銀行の国有化に踏み切り、のちに経済状況が安定した97年頃から政府所有の銀行株を市場に売却して財政収入まで獲得したという話が面白かった(それとの対比で、問題「不良債権の膨張」を認めず隠して対応を先延ばしにして2003年まで問題解決が
遅れた日本の事も書かれている「日本の場合は政府と金融機関が問題の隠蔽に走ったために、問題を大変にしてしまった」)。
現在のアメリカは、金融機関の経営者は責任をとって退任し、引き継いだ経営者が前経営者の責任・損失を引き継ぐのを嫌って積極的に損失を公開しているので損害の規模が分り問題解決の対応もしやすくなっている。また政府や連邦銀行が採っている政策も90年代に日本政府や日銀がとったものに比べはるかに有効で、「事後的対処」は良い。それにもかかわらサブプライム危機が発生して一年が経過しても危機が収束せず拡大しているのは問題の規模が桁外れに大きいため。
アジアの新興国など貧しい国からアメリカなど豊かな国へ資本を貸しているといういびつな構造になっている(貧しい国の過剰な貯蓄で豊かな国の過剰な支出が賄われている)。国債資本市場では資金需要が緩慢で世界金利は低下傾向にあるので、このいびつな構造は豊かな国の支出過剰というよりは貧しい国の貯蓄過剰が原因である。
動学的効率条件「その経済における投資収益率が成長率を上回る事」。動学的効率性の条件が満たされないような経済とは投資が既に過剰になっている経済で、富を投資に向けるよりもバブルに向けた方が経済にとってプラスになりえる。
新興国が台頭する過程で、「投資対象の供給」が充分に拡大しなかった事により、「金融資産」の市場における「超過需要」(投資対象の需要はあるのに、投資対象の供給がなく需要が供給を上回る)と、「実物財」の市場における「超過供給」の傾向が同時に発生しているのが世界経済の状況。その為「金融資産の価格上昇」と「実物財の価格下落」という相対価格の調整を通じて両市場で同時に需給均衡が満たされていくようになる。金融資産を「株式」と考えれば、アメリカなど先進諸国の株価が上がり好況で潤う事。金融資産を国債や社債のような「債権」とすると価格上昇は「金利の低下」を意味する(例:債券価格が80ドルから100ドルになれば金利が同じ4ドルなら5%から4%に下がるから)。実物財が超過供給で価格が下落するというのはデフレを意味し、超過供給とは「売れ残り」を背景にしているので不況圧力を伴ったデフレと解釈できる。新興国に投資対象がないという事は「世界的な低金利」と「世界的なディスインフレやデフレ」を引き起こす。また「金利の低下」には「ゼロ」という限界があるので、金利がゼロになると相対価格の調整は「デフレ」しかなくなる。ゼロの金利でデフレが起こると実質賃金・実質金利がともに上昇して不況圧力を高め経済的コストが高い。その為相対価格調整以外で同時均衡を実現する方法として民間と政府が「ヴァーチャルな投資対象」である「バブル資産」を次々に作るというバブル状態を作り出すという方法がとられる。(根本問題は新興国における投資対象の不足であり、バブルは根本問題から生まれた結果で、根本問題を解決しないとバブルという結果はいつまでもなくならない)
新興国の「貯蓄過剰」が生む問題を、先進国の「投資過剰」によって解消するためバブルを必要悪と考える説と問題なのは新興国の「貯蓄過剰」ではなく「投資過剰」を維持しようとする先進国の方が問題だと考える説とがある。しかし先進国が投資過剰により新興国の貯蓄過剰を解消しなければ世界的貯蓄過剰はさらに深刻になり「金利の低下」と「不況圧力」が一層すすむ事になる。
世界全体の経済成長を低下、特に新興国の経済成長を低下させれば、新興国の「貯蓄過剰」や「投資対象の不足」も解消される(経済成長の成果を全部消費するのを嫌って、貯蓄に回したり、投資に転換したり(その為新興国国内の投資対象がなくなっていって投資対象が不足する)するから)ので、そうすると世界的な貯蓄過剰も解消され、世界的な「低金利」や実物財市場で超過供給の傾向がある為に起こる「不況圧力」も解消される。このような世界全体の経済成長低下は、アメリカの経済失速・アメリカの消費に支えられて経済成長を遂げてきたアジアの新興国の経済の失速により自然と達成され、それは長期にわたる。
低成長になり、金利が成長率を上回ってプライマリーバランスを黒字にしない限り公債残高の対GDPに対する比率がどんどん上昇する厳しい財政状況では、政府は「あれもこれも」という選択はできず、「あれかこれか」の選択をしていかなければならない。成長が低下しパイの大きさがほとんど増えない経済においては、政治や経済に「悪いニュース」が多くなり、その「悪いニュース」を国民に正直に提示して、限られた選択肢の中から納得の行く選択を国民にさせる事が政治家に求められてくる
経済成長を低下させずに世界的な貯蓄過剰を解消するには新興国などが自国内に投資対象を作り出す事や貯蓄に回さないで消費させる事が必要。その為には金融ネットワークや所有権の保証など新興国内に投資する環境が整ったり、新興国の成長の成果を国民に平等に分配して消費に回させたり(富が富裕層に集中すると富裕層の消費には限界があるので富裕層は子孫に富を残そうとして貯蓄するから)、新興国が資本を海外に輸出すると新興国の通貨が下落(自国通貨は国外への投資のためにいっぺん国外の通過に転換されなくてはならないから)しそれが新興国の輸出に有利に働き経済が成長するという発展戦略を変更する必要がある。
東欧やアイスランドのような資本輸入に依存した発展戦略も、金融危機などで資本流入が万一ストップした場合国内経済が大きな打撃を受けるという問題点がある。国内の金融危機回避の為には対外借入を減らし外貨準備を積みますアジア新興国のような戦略のほうが有効だが、そのように貸し出し超過で経済を運営する事は、世界全体の貯蓄過剰を深刻化させ低金利・潤沢な投機資金を生み出して世界各地に住宅バブルなどを発生させる原因にもなる。
プリンシパル(最終的な金の出し手)・エージェント(代理人として行動する仲介役)問題「エージェントが本当にプリンシパルの利害に沿って行動するかという問題」
顧客の利益より自分の評判を大切にして行動をとるので「群衆行動」が生まれる(ファンドマネージャーは、同業者が買いにでているのに一人だけ売りに出て失敗し「無能」のそしりを受けることを嫌って同業者と同じ行動をとる。同業者と同じ行動をとって失敗しても「同業者と同じ行動をとった」と言い訳できるので結局同業者と同じ行動を
とる事が選ばれ、群衆行動が加速していく)
あくなき利益の追求を迫られる「競争」によって、現代の金融システムの構造が決まり、銀行を含めた全ての金融機関が、相対的な競走上の優位を目指してテールリスク(発生する確率は低いが発生した場合には損害が大きいリスク)を引き受ける。しかも「流動性の危機」が発生した場合にはもはや銀行さえも危機の沈静化の鍵となる「流動性」の供給が出来ない。ひとたび危機が発生すると市場においてそれを食い止める事ができる者はおらず、危機はとめどなく発展する。
流動性が潤沢であるという認識が市場を支配していれば誰もが無理に流動性を手元に引き込もうとはしない。したがって流動性はいつまでも潤沢で「金余り」の状態が生じる。他方で流動性が不足するという認識が市場を支配すれば急場で流動性が入手できなくなる危険を誰もが感じる。その結果無理をしてでも流動性を手元に引き込もうとするので「流動性の危機」が発生する
金融システムに対するわずかな衝撃が起こり、それに対し金融機関が「体勢を安定させる」為の行動を同一パターンでとってしまうとシステムへの衝撃がかえって拡大される可能性がある。
ある金融機関が流動性に逼迫し金融資産を投げ売る→金融資産の時価が下がり同じ金融資産を抱えている他の金融機関は時価会計で即時に評価損を記録→その損失処理のために自己資本の現存処理をすると自己資本比率低下を防ぐ為に保有する金融資産を処分する→それがさらなる金融資産の時価の下落を生むというスパイラルが発生する可能性がある(時価会計だと内生的に危機が拡大することの説明)
サブプライム危機後はインセンティブ体系の規制・金融システムに対する自己資本規制強化・低金利政策の改善など銀行やファンドの過剰な投資の抑制を目的にした規制が求められるが、サブプライム危機後の実体経済の落ち込みの状況では、問題は投資の過剰ではなく投資の縮小なので、このような規制を実施すれば実体経済はますます落ち込むことになる。当面の金融危機や不況発生の脅威に対しては積極策で挑むが、将来の金融危機も考えて金融システムに対する規制の強化も同時に推進していくべき。
銀行の貸出行動が資産価格を動かす原動力であった銀行が金融のシステムの主役だった時代は「過剰流動性(バブル)」の目安を「マネーサプライ」にもとめても良かったが、現在は証券会社やファンドが金融システムの中心になっているので、「現先(買戻しする約束の下で証券を相手に売って資金を調達する方法)の出来高」(証券会社の投資意欲が旺盛で資産を買い増しする時に資金を調達する方法)を「過剰流動性(バブル)の目安にすべきという話

全般的に
アジアの新興国などの貯蓄過剰をどうやって国内の投資や消費に向けるかを考えだせれば、バブルの発生も抑えられるし、貧しい国が発展したり生活水準があがったりして良いのではないかと素朴に思った。(現実にはそれができないから色々問題が起こっているみたいだけど・・・)。
もし全世界の経済成長が低下する事で世界的な貯蓄過剰が解消していくというシナリオ(アメリカの景気が減速し、アメリカの消費に引っ張られて経済成長を続けていたアジアの新興国の経済も悪化し、アジア新興国のエネルギー需要に支えられた産油国の経済成長鈍化し・・・といった具合に全世界の経済が悪化していく)になったら、ますます所得の再分配等みんなに少ない経済成長の恩恵がいきわたる政策が重要になってくると思った。
ほとんど理解はできていないけれど、かなり現在の世界の経済状況が良く分るようになっている本だとボクは思う。

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